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閑話 サッカーを通じて思ったこと 4

番外編/何故か病院が好き

2016年一月に入院した。心筋梗塞の再発である。
十年前に救急車で同じ病院にかつぎこまれ同じ手術をした。今回は歩いて病院に行き、すぐベッドに乗せられた。
独立前に勤めていた会社の先輩は、「淋しい」病気も二度目に感染ったときはなんとなく分かるものだと言っていた。感染る前に日頃の行いを反省すべきなのだが、これは心筋梗塞も同じである。
肥満、喫煙、鯨飲馬食といった生活習慣の帰結であって、同情の余地がない。
心筋梗塞の基礎知識だが、心臓の周りの冠動脈が詰まる病気で、カテーテル手術で詰まった箇所を取り除き、ステンドなる金属で血管を補強する。
カテーテルは脚の付け根か手首から入れて心臓の患部まで血管を通す。手術といっても外傷はなく、(発症してから手術まで早い場合)血流が再開した瞬間に何の苦痛もなくなる。
猿なみに反省が継続しにくい理由である。

手術後まだ集中治療室にいたとき、小島さんと落語を聞きに行く約束をしていたのを思いだし、治療台で安静状態のまま断りの電話を入れた。
次の日一般病室に移ってすぐ、頭を使わない大量の本を担いで小島さんは見舞いに来てくださった。
ちょうど集中治療室の看護師が、今後の患者対応の参考にと私にインタビュウをしていたときで、早速小島さんはソフトなセクハラをかました。
(小島註:たぶんですが「最近の看護師さんはパンツルックになっちゃって、患者さんの楽しみ、奪ってませんかね?」くらいでしょうか)
「そういえば最近看護婦もスカートはかないですものね」看護師が対応する。
「別にムリに相手しなくてもいいですよ」と私の弁。
「いや別に嫌いじゃないから」オヤジの扱いに馴れたプロの看護師である。
ベテラン看護婦の一方、二枚目の主治医とは別に、サブでとっちゃんぼうやみたいな研修医が私に就いた。
心電図を測るときセンサーを体に貼る位置を何度も間違えるのはまだしも、点滴の針を刺すのを何度も(のべ五回)失敗するのにはまいった。
結局先輩の当直医に頼んで、「どうやったら一発でできるようになるんだろう」と彼はつぶやいた。私は、内科医にとって重要な技能ではないと、とってつけたような慰め方をした。
後から考えたら、注射はやはり内科医にとって重要な技能だったが。

私に遅れて隣のベッドにきた若者は、心停止してAEDで蘇生したらしかった。
すでに彼は元気だったが、主治医から、心停止したときに自動的にショックを与える金属板とバッテリーを体に埋め込む手術を勧められた。
彼は身体障害者では現場に出れなくなるからと即座に断っていた。彼は建設関係の現場のグループのヘッドらしく、その責任感に感心した。
それから数日して、彼と若いのに二人の子持ちの妹との会話を聞いた。どうも手術なしでは車の運転も許可できないなどと、主治医に脅迫に近い説得をされたらしく、手術の覚悟を決めたようだった。
反省もなくステンドだけが増えた私に比べて、彼の潔さが心地よく密かにエールを送った。

今後の生活の反省を促すために、看護師から小冊子を渡された。
入浴とか排便とか食事とか細々と注意事項があった。
さらに性生活という項目もあった。刺激の強い行為はダメだと真面目に書いてあった。
数日して看護師が血圧を計りながら「ちゃんと読みました?」と尋ねた。
「ええ、不倫はダメというところまでしっかり読みましたよ」
あとで読み返したら不倫ではなく浮気だった。

病室の窓から、港の見える丘公園から伸びる丘陵が見える。
病室は八階で、尾根沿いの米軍キャンプの家屋とちょうど視線が同じになる。尾根の向こう側には、荒井由実の歌にでてくるドルフィンがあり、本牧の海が臨める。
病院は自宅からすぐなのに、さらに横浜にいることが実感できる風景である。

人生で初めて入院したのは、東ウクライナの地方都市だった。
まだ入社三年目、プラントサイトに長期出張で行って、現地に着いた瞬間に血を吐いた。
過労だったらしく点滴をつながれているうちに治ったのだが、一週間高校生一人と老人四人と相部屋で過ごした。
看護婦室で一日に一回尻をだして注射を打たれる以外何もすることはなかった。
スターリンとの戦争で、一千万人が死んだ生き残りの老人たちと、純粋を絵に描いたような少年と、看護婦の笑顔に囲まれて、暖かいだけの一週間だった。

この第一印象から今回まで、病室が好きである。
反省しきれない理由のひとつである。

廣瀬裕敏

閑話 サッカーを通じて思ったこと
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